Q1 · 2級 · 計算 · 一問一答
ある製品の重量は母標準偏差 $\sigma = 5$ の正規分布に従うことが分かっている。大きさ $n=25$ の標本を無作為抽出したところ、標本平均は $\bar{x}=102$ であった。
帰無仮説 $H_0: \mu = 100$、対立仮説 $H_1: \mu \neq 100$ のもとで、検定統計量 $z$ の値を求めよ。
解き方
母集団が正規分布 $N(\mu, \sigma^2)$ に従うとき、大きさ $n$ の標本平均 $\bar{X}$ は $N\left(\mu, \dfrac{\sigma^2}{n}\right)$ に従う。帰無仮説 $H_0: \mu = \mu_0$ が正しいと仮定すると、$\bar{X}$ を標準化した次の量は標準正規分布 $N(0, 1)$ に従う。
$$
z = \frac{\bar{x} - \mu_0}{\sigma / \sqrt{n}}
$$
分母の $\sigma / \sqrt{n}$ は標本平均の標準偏差(標準誤差)であり、$z$ は「標本平均が帰無仮説の値 $\mu_0$ から標準誤差何個分離れているか」を表している。
本問の値を代入すると、標準誤差は $\dfrac{5}{\sqrt{25}} = 1$ なので
$$
z = \frac{102 - 100}{5 / \sqrt{25}} = \frac{2}{1} = 2
$$
となる。標本平均は帰無仮説の値100から、標準誤差2個分離れていることになる。
検定の結論
対立仮説が $H_1: \mu \neq 100$ なので両側検定である。有意水準5%の両側検定では、上側・下側に2.5%ずつ棄却域を設けるため、棄却域は $|z| > z_{0.025} = 1.96$ となる。$z = 2$ はこれを上回るため、有意水準5%で帰無仮説は棄却され、「母平均は100と異なる」と判断する。
p値で考えると、標準正規分布表から $P(Z \geq 2) \approx 0.0228$ なので、両側検定のp値は
$$
2 \times 0.0228 = 0.0456
$$
となる。これは0.05より小さいため、同じく帰無仮説は棄却される。
条件を変えると結論はどうなるか
有意水準1%の両側検定なら棄却域は $|z| > 2.576$ となり、$z = 2$ では帰無仮説は棄却されない。p値 $0.0456$ が0.01より大きいことからも確認できる。このように、同じデータでも有意水準の設定によって結論が変わりうる。
対立仮説が $H_1: \mu > 100$ の片側検定であれば、有意水準5%の棄却域は $z > 1.645$ となり、p値は $0.0228$ となる。
本問は母標準偏差 $\sigma$ が既知なので標準正規分布を用いた。$\sigma$ が未知で標本から求めた不偏分散の平方根 $s$ で代用する場合は、統計量 $\dfrac{\bar{x} - \mu_0}{s / \sqrt{n}}$ が自由度 $n-1$ の $t$ 分布に従うため、$t$ 検定を用いる。
Q6 · 2級 · 計算 · 一問一答
2つのグループについて、グループ1(標本サイズ $n_1=10$、標本平均 $\bar{x}_1=52$)、グループ2(標本サイズ $n_2=10$、標本平均 $\bar{x}_2=48$)のデータが得られ、合併分散(プールした分散)から求めた標準誤差が $2$ であった。
対応のない2標本の $t$ 検定における検定統計量 $t$ の値を求めよ。
解き方
対応のない2標本の $t$ 検定では、帰無仮説 $H_0: \mu_1 = \mu_2$(2つの母平均は等しい)のもとで、標本平均の差を標準誤差で割った次の統計量を用いる。
$$
t = \frac{\bar{x}_1 - \bar{x}_2}{\mathrm{SE}}
$$
$t$ は「2つの標本平均の差が、標準誤差何個分の大きさか」を表している。
本問の値を代入すると
$$
t = \frac{52 - 48}{2} = \frac{4}{2} = 2
$$
となる。
合併分散と標準誤差の求め方
本問では標準誤差が与えられているが、通常は2つの標本の不偏分散 $s_1^2, s_2^2$ から自分で計算する。2つの母分散が等しいと仮定し、両方の標本の情報を合わせて共通の分散を推定したものが合併分散 $s_p^2$ である。
$$
s_p^2 = \frac{(n_1 - 1)s_1^2 + (n_2 - 1)s_2^2}{n_1 + n_2 - 2}
$$
各標本の不偏分散を、それぞれの自由度 $n_1 - 1$、$n_2 - 1$ で重み付けして平均した形になっている。
標本平均の差 $\bar{x}_1 - \bar{x}_2$ の分散は $\sigma^2\left(\dfrac{1}{n_1} + \dfrac{1}{n_2}\right)$ なので、$\sigma^2$ を $s_p^2$ で置き換えて標準誤差は
$$
\mathrm{SE} = s_p \sqrt{\frac{1}{n_1} + \frac{1}{n_2}}
$$
となる。本問では $\sqrt{\dfrac{1}{10} + \dfrac{1}{10}} = \sqrt{0.2}$ なので、$\mathrm{SE} = 2$ は合併分散 $s_p^2 = \dfrac{2^2}{0.2} = 20$ に相当する。
検定の結論
統計量 $t$ は自由度 $n_1 + n_2 - 2 = 18$ の $t$ 分布に従う。自由度が $n_1 + n_2$ から2減るのは、2つの標本平均 $\bar{x}_1, \bar{x}_2$ を推定に使っているためである。
対立仮説を $H_1: \mu_1 \neq \mu_2$ とする有意水準5%の両側検定では、棄却域は $|t| > t_{0.025}(18) = 2.101$ となる。$t = 2$ はこれを下回るため、帰無仮説は棄却されず、「2つの母平均に差があるとはいえない」と判断する。
同じ「2」という値でも、母分散既知の $z$ 検定なら $|z| > 1.96$ を超えて棄却される。$t$ 分布は標準正規分布より裾が重く、棄却の基準となる値が大きくなるためである(自由度が大きくなるほど標準正規分布に近づく)。なお、対立仮説を $H_1: \mu_1 > \mu_2$ とする片側検定であれば、棄却域は $t > t_{0.05}(18) = 1.734$ となり、帰無仮説は棄却される。
前提条件
この検定は、2つのグループが互いに独立で、それぞれ正規母集団からの標本であり、2つの母分散が等しいことを前提としている。等分散性は $F$ 検定などで確認する。
母分散が等しいと仮定できない場合は、合併分散を使わず、標準誤差を $\sqrt{\dfrac{s_1^2}{n_1} + \dfrac{s_2^2}{n_2}}$ として自由度を近似的に求めるウェルチの $t$ 検定を用いる。また、同じ対象を2回測定したデータのように2つの標本に対応がある場合は、差をとって1標本の $t$ 検定として扱う(対応のある $t$ 検定)。